名古屋高等裁判所 昭和25年(う)319号 判決 1950年5月27日
被告人
富田正男
外一名
主文
本件控訴は何れも之を棄却する。
当審に於ける訴訟費用(国選弁護人支給分)は被告人出口泰の負担とする。
理由
被告人富田正男の弁護人伊藤嘉信提出の控訴趣意書の要旨は。
原審公判調書の記載に依れば被告人等守衞は夜間は各所の戸締を為すに就き鍵を保管し、従つて施錠内物の品は一切被告人等の保管に帰して居たのであるから原審判示の二乃至七の犯罪事実は何れも橫領罪に該当する。従つて原審が右の事実を窃盜と認定したのは事実誤認の違法があり右の違法は判決に影響を及ぼすものである。(中略)と謂うにある。
依つて記録に基き審按するに。
一、被告人富田正男に就て。
原審第二回公判調書中被告人の供述記載に依れば被告人は東洋紡績株式会社三重製絨工場の守衞として勤務して居たこと並に原審判示の第二乃至第七の事実は何れも夜間勤務中行はれたものであることは之を認めることができるが凡そ工場の守衞として夜間該工場に勤務する場合に於ては專ら該工場の警備に任ずるのであつて工場内に在る物件の占有迄委託せられるものではないことは常識上明白であるから論旨第一点は理由が無い。